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18 octobre 2014

Takashi Baldwin

 

Voici Takashi Baldwin... (traduction d'Emi Honda et Satomi Aoki) pour mes amis japonais -- For my Japanese friends !

 

タカシ


 生まれてこのかたタカシが棲み家にしている乗り物の残骸は、全く見栄えの良い代物ではなかった。それがかつてはゴミ収集車だったのか小型トラックだったのか、はたまた飛行機のキャビンであったのかは、見当もつかなくなっていた。彼は今までそんなことに想像を巡らしたことなどなかった。仕切りには数えきれないほどの穴が開き、金属の骨組みは錆びきっていた。そしてこの崩壊しつつある不格好な塊が、彼の住居であった。かつて誰かがこの広大なる高地のど真ん中に乗り物を置き去りにし、残りの道のりを歩いていったに違いない。だがここではそんな説明でさえいぶかしく思われた。この場所に通じる道など一切存在せず、その乗客が向かったかもしれない方角を示すようなものも存在しない。そこには見渡す限りアンデス山脈の高地が広がっていた。もしかしたら、ある日忽然と金属の塊が岩から出現したのかもしれない。その証拠に、それは確かに動かぬ石の引力に囚われているように見えた。棲み家の真ん中には、樹齢何百年かの骨ばった古木が生えていた。彼に熱と光を供給してくれる原子炉を見守ると同じ熱心さで、タカシはその木をとても大切にした。  公務員の生活は彼の性に合っていた。タカシは昔からお役所仕事に向いていたのだ。ただ、仕事自体は面白かったのだが拘束時間が長過ぎたため、だんだんと有給休暇や休職を夢見るようになった。


 ファルスタッフとグドランが彼の家を訪れたその日、タカシは何十年も前に自分が出した賃貸広告のことを、すっかり忘れていたことに気付いた。二人の男の身なりは彼を戸惑わせた。彼らの服はまるでボロ切れで、あたかも危険と波乱に満ちた、長く苦しい旅をくぐり抜けてきたかのようだった。空襲、猛獣、残虐な海賊、あるいは長い収容所生活が、二人をこのようにうらぶれさせたに違いない。だがタカシはそのことを詮索する必要はないと思った。


 彼らは荒っぽい挨拶を交わした。そしてすぐさま交渉が始まった。ファルスタッフが外国語を話すため、交渉は難航した。実を言うとグドランは高値で雇われた通訳だったのだが、通訳においても何においてもさっぱり無能な男であることが判明した。実際、グドランとファルスタッフはかなりかけ離れた言語でやり取りをしていた。そして彼らの言語は、タカシが使う言葉とは似ても似つかぬものであった。


 それでも、彼らはタカシの家の見学を行なった。アパートは広告で謳われていた程広々としているわけではなく、面積は一平米弱、高さは一メートル半ぐらいで、おそらくは運転席と助手席の間と思われる場所に位置していた。ただで使い放題の、原子炉から供給されるエネルギーがこの物件の最大の魅力であった。この点は、もちろん何よりもまず第一に交渉された。部屋の快適さをチェックするためには、各自順番に部屋にもぐり込まなくてはならなかった。グドランは立ったまま、完全に両手を伸ばせないことを主張するかのように腕を広げてみせた。一方、ファルスタッフは目をつぶって嬉しそうに座っているだけであった。彼のその満足げな微笑は、このアパートに非常に興味を持っていることを表しているようにタカシには思えた。こうして広告に載っていた部屋の間取りをはっきりとさせた後、タカシは原子炉の素晴らしい能力を披露して見せた。まずは少量の水を温めて、岩茶を淹れた。訪問客たちはとても喜んでくれた。旅のせいで随分疲れていたので、岩茶は二人を和ませてくれた。日が暮れると、タカシは儀式か祈祷のようにも見える踊りを舞った。そしてキャビンの間仕切りに青白い光を投影するランプに火をつけた。ファルスタッフを決心させるにはこれだけで充分だった。こんな素晴らしい場所に住めるチャンスが、彼の目の前に輝いているのだ。その後の数ヶ月は、特に家賃に関する交渉のために費やされた。


 タカシは、この一件でずいぶんと仕事に遅れをとっていて、訪問客たちのせいでさらにストレスの種が増えたことを不満に思っていた。しかし日が経つにつれて、徐々にお互いの言語を理解できるようになり、交渉もごくわずかずつではあるが進展を見せた。すぐに判明したのは、グドランが実は通貨として使用される身にあった、ということである。ファルスタッフは、タカシが当初理解していたように、グドランを通訳として雇っただけではなく、彼ごと買い占めていたのだ。そして膨大な出費と旅費がかさんで、ファルスタッフはすでに破産状態だったのである。


 タカシはグドランなどに関わりたくなかった。その理由として、居住スペースが足りないということを挙げた。アパートは二人で住むにはあまりにも狭苦しいし、さらに狭いタカシの部屋で、彼とグドランとが共同生活をする、などというのは問題外だった。様々な解決策が講じられた。ファルスタッフは、グドランの有利になるように売り込んだ。彼の長所を列挙して褒めちぎった。辛かった幼少期の悲話に及んでは、もう少しでタカシを説得できるところであった。しまいにはアイデアも尽き、ファルスタッフはとうとう木を切り倒してはどうかと提案したのだが、タカシは感傷的な理由からそれを頑として聞き入れなかった。今度は彼の方から、長い冬の間グドランを糧にして生き延びようと提案してみた。だがグドランがその案に対して拒否権を行使したし、彼の持ち主もこの選択に難色を示したので、この案は却下された。グドランが実際のところ二人に食べられてしまったのかどうかを表す記録はどこにもない。忘恩は時に不可避である。だが幾人かの語り部たちにより、交渉がこの大事な局面を迎えた後の、グドラン・バルドウィンに関する記述が、一切見つからないという事実が指摘されている。他に選択肢がなかったのだろう、と推測する者もいれば、この問題はタカシとファルスタッフが秘密裏に交わしたサインによって解決したのではないか、と考える者もいる。特にこの問題のせいで交渉が決裂してしまったのかどうかは誰も知らないが、タカシの原子炉が数年後に機能しなくなってしまった、というのは確かな事実らしい。この不運な出来事のせいで、タカシの賃貸人候補はさっさとそのアパートから出て行ってしまったに違いない、と多くの者が主張している。語り部全員が一致して確信していることがひとつ。タカシ・バルドウィンのアパートは、現在も賃貸人募集中である。

 

 

PS J'espère seulement que le texte est dans le bon sens...

Bon, OK, demain la version française ! S.L.

 

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